アカデミー賞

僕の中学時代の夢は、映画監督でした。
何故映画監督になりたかったかというと、映画の素晴らしさに魅入られたからとか、衝撃的な作品に出会ったからとか、そういった大それたものではなく、ただみんなに褒められたかったからだけだったんです。
単純に大金が欲しかった。
もてたかったんです。
あの頃は、猿と紙一重でした。

特に憧れたのは、アメリカのアカデミー賞
あの衣装やら会場やらの異様な豪華さに、当時その様子をテレビ中継で観ていた僕はガツンとやられてしまいました。あの場に行けば世界で一番幸福になり、全能感に浸り、神のようになれる。郊外の片隅で日々モンモンとしていた僕は本気でそう妄想していました。所謂アメリカンドリームに感染してしまったんです。中学生の頃は自分は映画監督になるんだと何度も胸に誓ったものです。

しかし、そんな浅いモチベーションが長続きするわけもなく、大学の映画サークルで他人を動かす事の面倒臭さに気付いた僕は、早々と映画製作からは手を引き、その夢を諦めました。アメリカンドリームに挫折した訳です。だから今でも、アメリカのアカデミー賞の様子をテレビで見たりすると、複雑な想いが僕の頭をよぎります。

で、何で、こんな話をするかというと、昨日テレビでやっていましたよね。アカデミー賞
しかも、アメリカではなく、日本の。

不思議な事に僕は昔から日本のアカデミー賞にはピンとこないんです。
まず、アカデミー賞って名前をそのままパクッているところがダサい。
しかも日本人の役者はアメリカ人と違ってインタビューの時いつも緊張してるし、俳優の衣装も会場も地味とまではいかないまでも中途半端に派手。そこがまたダサい。でさらにダサいという事に気付いていない所がさらにダサい。もうこれじゃあダサいスパイラルです。まるで自分を見ているように恥ずかしい。

そもそもアカデミー賞という形式自体が日本人に向いてない気がするんです。しかも肝心の作品賞もいつも今一パッとしない。以前「雨上がる」という映画が最優秀作品賞を貰っていた時があったけど、あの時はさすがに笑ってしまいました。もう黒沢明はいいだろうって。
いつも選ばれる作品が妙に後ろ向きなのは、審査員が爺さんばかりだからでしょうか。ちなみに今回最優秀作品賞に選ばれたのは「ALWAYS 三丁目の夕日」という作品。昭和三十年代の古き良き日本を、CGの最新技術で再現した映画だそうです。

二十一世紀初頭に、過去懐かしんで夕日をしみじみ眺める日本人。
なんか引き裂かれているな〜と思うのは僕だけでしょうか。